archives 2006 - 2009

si - June 29, 2005-February 20, 2007

n

めざしを担う若者達よ。
耳たぶに酔い、
ささくれに憂うこともよい

気長に、肌寒く鳥肌を描くことも悪くはない。
深爪に怯えることもない。

月が滲むこともある。
眼鏡が傾くこともある。

肌の乾きにはくしゃみをすればよい


がれきに潜む農民
景色に嘆く
髪の毛を捧げる

睫毛を捨てる
先人を憶う。

悪くはない

熱を保てばよい
そっけない




午前九時


蜘蛛の糸に包まれるひとは
足の親指を一本だけ残し
子宮の中の胎児のように
身を屈め
薄いまゆのなかに収まった



サルビア号


サルビア号は海の上
すし詰めぎゅうぎゅう
のみかけビールにミラーボール
オイルの匂い


サルビア号にかもめは寄らない
飛行機ぱたぱた
滑車がちかちか
霊柩車だって泳いでる


夜の海
潮のない海
工事中の海


サブマリンにつかまる前に
すぐさま旋回


サルビア号は機転がきく



y



クワガタが舞う
ゆるんだ弦を
親指で撫でる
街の明かりで滲んだ


*


歩き慣れた道を
いつも通りの歩幅で歩く


*


彼女は笑い
鼻を撫でる



夜の舟


夜の舟は新宿から出発する
ご飯の残りを急いで詰めて
駆け込まないと
間に合わない


夜の舟では、
汗をかかないようにする
右手は窓に添え
左手は頬を支える


じっと目線を保ち
心を沈める


赤い月
丸い空
淡い時


夜の舟は
女と二人で乗るのがいい
汗をかかないように
ゆっくりと
声が聞こえないくらい


小さな舟は風に弱い。
静かな夜に
花火なんかを持って乗るといい。



タップダンスを踊る人


風が木を枯らす
はだけたガラス道


あなたの襟に付いた




薬指で、かさ、とやる。


アルコール。
子供だまし。


目隠し
天体は
二乗、三乗、四乗、五乗、..と


ベイリーズ磁場
前の話。
ふやけたグラス。
私は
心を奪われないの。


あなたの頬についた




中指で、かさ、とやる。


タップダンスを踊る人が。
ほら。


***


タッタタタ


(ユパのための歌詞、メモ)



K氏との食事


K氏の食欲は年々衰退し、
食欲に限らず、性欲、睡眠欲すら薄れていった。
ふやかしたパンを一枚食すのみ。


日中、書を記し、夜は世界を眺める日々。
蛙の胸に秘められた、古代の地理を暴くことが夢。


探れば胃は溢れ、
想えば気は休み、
知れば昇る、
と。


世界平和には鍋の蓋を被せればいい。
食すより待つのがいい。


とのこと。





人ごみ


立ち往生。
桟橋。
朝鮮の壁紙を改装。


夕焼け。
小児科で苦笑い。


晴れ舞台。
来客。
茶柱を一杯。
御馳走します。



あいうえお


あいうえお

かくしかじか

さらさらこはん

たちおうじょう

なめくじむずむず

はらっぱぴゅうぴゅう

まちぼうけ

やんわり

らくだのせなか

わたし



魚拓の筆


A
「やあ。ひさしぶりだね。
 あの時の魚拓は無事だったかい?」


B
「ああ。
 なんてことをいっているんだ。
 君が魚を急に腹一杯、
 食べてしまったんだから。
 僕はただ、骨を焼いて。海に蒔いてきたんだろう。
 君は僕の苦労だってしっているし、あれがどれだけのものだったかもしっている。
 僕はなにも知らなかっただろう。」


A
「確かにね。
 まあ、
 そうやってひがむのはよくない。
 なぜなら。
 僕は君が最近肺を悪くしたわけを、
 そういった君の気質の所為だとふんでいるんだ。
 どれ。
 みてやろう。
 めざしはあるか?
 めざしをひと月干して雀につつかせるんだ。
 めざしの内臓と雀の唾液が起こす化学的反応を利用するんだ
 後はそれを肺に塗って真夏の海岸で焼けばいい。」


B.
「そういえば君は昔、医者をやっていたな。
 しかし肺に塗るってのはどうやるんだい?
 本に載っているかもしれないね。
 肺が治れば僕はまた釣りにでれるしね。
 そうすれば僕はまた魚拓をとることができる。」


A
「そうだろう。
 君だってよく知っているじゃないか。
 僕はそう思ってあの黒鯛を慌てて裂いて
 カラスの餌にしてやったんだ。
 あいつらほんとに腹を空かせていたもんだから
 散々暴れて沢山羽を落としていっただろう。」


B
「そうだね。
 僕は知っているよ。
 君はその羽を集めて筆を作った。
 カラスはガサツだけど、
 あの真っ黒い羽は、墨汁の黒さをいっそう引き立てる。
 筆は釣り人達の心を奪った。」


A
「そう。
 僕は医者を辞めて。
 新しい商売をはじめたんだ。
 いまでは立派な筆職人だ。
 僕は釣り人達の心を奪ったんだ。
 愛人だっているぞ。
 そうだ君に新しい筆をやろう。
 毎日捨てられていく、
 焼き鳥の串からヒントをもらったんだ。
 タレで滲んだ串を裂いて筆にしたんだ。
 君のような人間によく合う。
 いつか君がまた魚を釣ったなら、役に立つと思うんだ。」


B
「そうだね」